小さきものに限りない愛を 20 ~素材
白鳥静香著
・どのような美しいものも、素材をそれだけとってみれば、
おそらく、醜く、汚いものでしかないでしょう。
彫刻はただの石ですし、
絵画の絵の具もそれだけ床に落ちていれば拭き取るしかない汚れです。
それを喜ぶ人はいないでしょう。
音もまたそうです。
いいメロディーから、ただひとつの音だけをとってきて、
たとえば「ミ」の音だけを、
あるいは、「ファ」の音だけを取ってきて、
鳴らし続ければ耐え難い騒音でしかないのです。
美は素材にあるのではないのです。
私たち人間は、
そのような美しくない素材を使って美をつくりだすことができる存在です。
だからこそ、私たちは、
世界のどのようなもののなかにも美を見出だすことができ、
人生のどのような出来事のなかにも幸福を見出だすことができるのです。