小さきものに限りない愛を 19 ~物語
白鳥静香著
・私たちは物語や小説を読んで、
あるいはドラマや映画を見て感動します。
読んでよかった、見てよかったと思います。
物語やドラマのなかには悪人もいますし、
理不尽な不幸や、理不尽な苦しみも沢山出て来ます。
物語ではけっして、よいことばかり、
幸せなことばかりが起きるわけではありません。
にもかかわらず、私たちはそれに感動し、
それを「読んでよかった。」「見てよかった。」と思うことがあるのです。
私たちの心は、
そのように悪人や、不幸や、苦しみを素材としても、
なお、そこにひとつの感動的な物語や、ドラマを見出だすことが
できるのです。
もし、私たち自身に幸福であることが可能であるとしたら、
私たちの心がそのようなものであるからではないでしょうか?
物語やドラマほど極端ではないとしても、
私たちもやはり、生きていれば必ず、
悪い人や、理不尽な不幸、理不尽な苦しみと出会います。
良いことしか起きないなどという人はひとりもいないのです。
にもかかわらず、私たちに幸福であることが可能であるとしたら、
私たちに、よいことのなかだけでなく、悪いことのなかにも、
悪人や不幸や苦しみの出てくる物語にも、
感動できるような心があるからであるのでしょう。
私たちの心が、どのような素材からでも、
そこに美を見出だし、美をつくりだすことができるようなものであるから
私たちは幸福であることが可能であるのです。
世界に美を見出だそうとする心と、幸福ということとは、
とても近くにあることであるのです。